12年度初頭は、昨年度に引き続き、耐火構造及び耐火薬剤処理の未検討部分について、検討を行った。昨年度の研究でCFRPの遮蔽層として有効性が確認されており、この遮蔽層による耐火構造を薬剤処理と複合することを考えた。処理単板及び未処理単板を接着複合したLVLを作製し、耐火試験を行った。交錯積層に由来するバットジョイント間の隙間や交差部分の影響で、処理層が2層以下では、無処理のみの場合に比べ、耐火性改善は小さかった。しかし、耐火層が4層のものでは、それ以上のものと比べても耐火性の差は小さくなり、耐火処理層が遮蔽層として効果を持っていることが明らかになった。このことより、円筒製造時に単板で耐火処理したものを適時組み合わせることで、必要な耐火性を設計できることが示唆された。 長さ各4mの円筒LVL(内径240mm、2.4mm単板10層、耐火処理なし)、鉄管(内径240、肉厚4mm)及び塩ビ管(内径250、肉厚8mm)を用い、灯油ジェットヒーターで200℃の熱風を送り込んだときの熱伝導の差異を、サーモビジョンで観察した。3種の中では円筒LVLがもっとも熱伝導が小さく、入り口と出口の温度差も小さかった。このときの表面温度の上昇経過は鉄管をグラスウールで厚さ20mmに被覆したものとほぼ同等であった。塩ビ管は試験中軟化してきたため、長時間の実験は行えなかった。加熱初期の円筒LVL表面の温度分布には、その積層構造に由来する温度ムラが見られたものの、円筒LVLは塩ビ管のような熱軟化による構造耐力の低下は生じないと予想できることから、構造用兼熱輸送管として優れた部材であることが確認できた。
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