本年度は、チガイソ科海藻チガイソ(Alaria crassiforia)の胞子葉に含まれているウレアーゼ阻害成分であるフロロタンニンの分子量の検討した。さらにフロロタンニンの微生物由来酸性ウレアーゼに対する阻害活性の検討を行った。 チガイソを含水アセトンで抽出した後に、溶媒分画を行い、セルロースカラムクロマトグラフィーに供してフロロタンニンを得た。得られたフロロタンニンの分子量測定には、疎水性高分子化合物の分子量測定用のゲル浸透高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いた。フロロタンニンはフェノール性水酸基が多数存在するために、多数の分子が会合対を形成していると推定できる。よって、フロロタンニンをそのままゲルろ過クロマトグラフィーに供すると見かけの分子量が高値を示すと予想できる。そこで、フェノール性水酸基のアセチル化を行い分子間相互作用を抑えた。フロロタンニンアセチル化物をゲル浸透HPLCに供した結果、アセチル化物の分子量は3000〜7000と見積もられた。 昨年度はJack beans由来の中性ウレアーゼを用いて阻害活性を検討した。今年度は胃内のような低pH条件下でのフロロタンニンのウレアーゼに対する阻害活性を検討した。乳酸菌Lactobacillus fermentumの生産する酸性ウレアーゼに対する阻害活性を調べた結果、pH4の条件下でもフロロタンニンは酵素阻害活性を示す(IC_<50>0.18mg/mL)ことを明らかにできた。この値は中性条件下で行ったJack Beans由来ウレアーゼに対する阻害活性とほぼ同等であった。フロロタンニンのH.pylori由来ウレアーゼに対する阻害活性の検討までには至らなかったが、フロロタンニンは微生物由来の酸性ウレアーゼに対して阻害活性を示したことから、胃内でのH.pyloriウレアーゼに対する阻害効果を期待できると結論した。
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