研究概要 |
1 アカザラガイTnIを横紋閉殻筋より単離しCNBr消化によりN端伸長領域に相当する残基1-129の断片(CN35K)の他、残基158-292の断片(CN17K)を調製した。また、V8プロテアーゼ消化により残基1-230(V8N)および残基231-292(V8C)の断片も調製した。これらのトロポニンC(TnC)とのCa^<2+>依存的な結合能を尿素ゲル電気泳動およびアフィニティクロマトグラフィによって比較した結果、V8NはTnCと結合したが、他は結合しなかった。この結果より、アカザラガイTnIのTnC結合部位は残基130-157付近であると考えられ、N端伸長領域はTnCとの結合に関与しないと推測された。また、これらの断片のアクチンとの結合能を共沈実験によって比較した結果、CN17KおよびV8Cがアクチンと結合するのに対し、CN35KおよびV8Nは結合しなかった。これはアクチン結合部位が残基231-292の領域に存在し、N端伸長領域には存在しないことを示している。 2 アカザラガイ横紋閉殻筋、チヂミボラ足筋、イガイ収足糸および閉殻筋、ミズダコ腕筋、スルメイカ外套膜筋、クボガイ足筋およびヨメガカサガイ腹足筋から天然アクチンフィラメント(NTF)を調製し、それらがウサギミオシンMg-ATPaseをCa^<2+>依存的に調節するかどうか検討したところ、ヨメガカサガイ以外の全てのNTFがCa^<2+>調節能を示した。さらに、抗アカザラガイTnI抗血清を用いたイムノブロッティングにより、これらの軟体動物筋には分子量35,000から60,000程度の脊椎動物TnI(分子量21,000)に比べて大きなTnIが存在していることが示唆された。以上の結果は、アクチン連関の収縮調節機構、さらにアカザラガイTnIと同様なN端伸長領域を持った高分子量のTnIが軟体動物門中に広く分布している可能性を示唆している。
|