研究概要 |
近年,安全で良質な食品の生産・確保に有効な管理手法としてHACCPが注目されている.食品の安全性を脅かす第一の因子には細菌汚染が挙げられるが,食品工場や調理施設では,大腸菌群の菌数を早期に把握することが衛生管理を行う上で極めて重要である.そこで本研究では,HACCPに対応可能な迅速・高感度な細菌数測定法を目指し,フローサイトメトリー(FCM)を用いて,大腸菌群測定法の確立を検討を目的に研究を遂行した. 本研究では大腸菌群のモデルとしてEscherichia coliを用い,FCMを用いた菌数測定を試みた.また,大腸菌群を特異的に検出するために,それらの大腸菌群特異的酵素であるβ-galactosidaseを指標とした測定法の開発を検討した.すなわちFluorescein-di-β-D-galactopyranoside(FDG)を基質として加え,β-galactosidaseの加水分解作用によって得られた蛍光体をFCMで測定し,その特異的検出を試みた. その結果,E.Coliの菌数測定においては10^5 〜10^8cells/mlの範囲での測定が可能であり,一検体の測定所要時間は1分と,従来法と比べて極めて迅速な測定が可能であった.さらに菌体内β-ガラクトシダーゼ活性の測定を試みたところ,FDG濃度:200μg/ml,反応時間:120分条件下で,菌体内の酵素反応が最大となり,そのモニタリングが可能であることが明らかとなった.平成12年度ではこれらの知見を基盤とし,本測定法を用いて,実際の水産食品に付着している細菌の菌数測定を試みる.
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