農業生態系、とくに日本農業の根幹をなす水田稲作をとりまく生態系を対象に、その生物多様性の経済的価値の評価を計量経済学の手法を援用して行うとともに、その価値の維持保全を視野に入れた農業政策のあり方について提言を行うために、初年度の取り組みとして、文献・資料収集の徹底、現地調査、理論モデルの拡充、調査表の作成、プレテストなどを実施した。文献サーベイにおいては、資料収集を広範囲に行うとともに、外国の文献はインターネットで米国の情報サービス機関にアクセスし、検索し、あわせてこの分野の先進的研究機関であるワールド・ウオッチ、未来研究所から資料や文書を収集した。また、農業環境技術研究所、農業研究センターなどで専門家からのヒヤリングを行った。理論モデルの拡充にむけては、生物多様性を経済学的に整理するとともに、農法の違いによる生態系への影響を生物多様性の観点から比較分析し、指標化するための考察を行い、また具体的なCVM実施のための調査デザインを構築する作業を行った。あわせて従来の理論モデルと計測モデルの検討を環境評価の経済学や統計学の最新の成果を取り入れる形で行った。また水田生態系の豊かな滋賀県湖東地域を事例に想定して、CVMデザインのための予備的調査を行った。従来の調査表を、辞書的選好者や抵抗者を回避する方向で改良した質問表を用いて、地域でプレテストを行うとともに、他の領域の専門家の協力を得、質問表を検討した。
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