本研究で開発した現場据置型自動水質分析システムは以下の特徴を有するものである。1)フロースルー型ISE(イオン選択制電極)の利用による測定精度の向上と省試料化の実現。2)電位差計にDC駆動の生体電位計測電位差計を利用。3)DC(バッテリー)駆動による長期(2〜4週間)運転の実現。4)逆洗機構の組込によるサンプル取水部フィルターの長寿命(2〜3週間)化。5)自動2点校正回路の組込によるISE応答の変動への対応(定量精度の確保)、6)サンプル取水ループの直後にエアトラップ(空気抜き)を設置し、デッドボリュームを減少。7)流路・ISEに常時キャリアーを流すことによる分析回路の自動洗浄、8)耐菌性テフロンチューブによる流路の汚濁の防御。9)プランジャーポンプの採用による脈流の抑制と精度の向上。10)脱気装置の追加による送液の長期運転の向上。 上記システムを奈良県南部の山林流域に2000年9月より現場設置し、装置の試運転と改善を行いながら、Na、K、Clの測定を行っている。最終的に上記構成に改めてからの測定は2000年2月よりであり、これ以降15分に1度の間隔で精度の良い計測が可能となった。通常試料採水が困難な冬季の降雨出水時でも連続的なデータ収集が実現できている。流量・降水量の水文資料と比較した結果、洪水時のヒステリシス等の検証も可能であった。電位応答波形から検量線の時間変動を考慮しつつ濃度を計算する変換プログラムも作成した。また、試料中に微量に含まれる気泡のため静電気が蓄積しノイズが増えるため、ISEと電位差計は作動接続が必須である。特に洪水時には気泡の混入量が増えるためISEの応答波形は乱れやすく、これには脱気装置の追加および堰に設置されたスクリーンの上流側移動により対処した。 残された問題点として冬季の試料凍結があり、これにはチューブ周辺へのヒーターの追加を行う必要がある。
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