研究概要 |
NaClまたはKClなどの無機塩の希薄水溶液を電気分解したときに陽極側に生成される電気分解強酸性水(以後,強酸性水)の噴霧による作物病害防除去確立のための基礎研究として,本年度は次の2つの試験を行った。 第一の試験では,強酸性水(pH:2.7;遊離形有効塩素濃度(ACC):30ppm;酸化還元電位(ORP):1.35V)噴霧区で,無噴霧区および井水噴霧区に比較してキュウリうどんこ病の発病度が有意に小さくなることを明らかにし,強酸性水噴霧によるキュウリうどんこ病を有意に防除できることを実証した。またこの試験で,供試した強酸性水とほぼ等しいpHおよびACC(結果的にORPも等しくなった)を有する水溶液(以後,pH-ACC調節水)を塩酸と次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて作成し噴霧した結果,発病度および葉やけ様の生理障害(強酸性水を作物に噴霧した場合にしばしば観察される障害)の発生葉率が,強酸性水噴霧区と同様になるという結果を得た。このことは,病害防除効果に及ぼす強酸性水のpH,ACC,ORPなどの因子の影響を定量的評価するための試験においては,pH-ACC調節水を擬似強酸性水と見なして利用可能であることを示している。第一の試験内容については,「生物環境調節」38巻1号に掲載予定で現在印刷中である。 第二の試験では,強酸性水噴霧区,無噴霧区および井水噴霧区の葉の無機成分(カリウム,マグネシウム,カルシウム,ホウ素,マンガン,鉄,銅,亜鉛,および窒素)含有量の比較を行ったが,葉やけ様の生理障害発生原因の解明につながるような差異は認められなかった。今回測定対象としなかった無機成分が関与している可能性,および他の物質あるいは環境要素が関与しうる可能性について現在検討中である。
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