本研究は、AFLP法を用いニワトリ筋ジストロフィー遺伝子を染色体上に位置付け、この原因遺伝子の推定を行うものである。この遺伝病に対するニワトリ戻し交雑のリソースファミリー55個体に対し、分析を行いその個体ごとの筋ジストロフィーの遺伝子型を同定した。次いで、連鎖分析を行うためのAFLPマーカーの検討を行い、バンドがスメアにならず、かつ最も良く多型が検出できる制限酵素をいくつか検討した。その結果、EcoRI MseIの組み合わせが最も効率がよいと判断した。EcoRIとMseIのプライマーにはすべて3塩基の選択的プライマーを用い、最終的に100以上の組み合わせを使用した。これを用いた分析より、このファミリーに対するAFLP多型マーカー数は600を超えた。さらにこれらAFLPマーカーを染色体上に位置付けるために、マイクロサテライトマーカーの分析も同時に行った。180のマイクロサテライトマーカーの多型性をこのファミリーに対して検討したところ、90個のマイクロサテライトマーカーが多型性を示し、連鎖解析に使用した。このAFLPマーカー、マイクロサテライトマーカーおよび筋ジストロフィーの遺伝子型に対して連鎖分析を行ったところ、45の連鎖グループが検出された。ニワトリ筋ジストロフィーの遺伝子はこの連鎖グループの一つに属しており、マイクロサテライトの分析からニワトリ第2染色体q腕上に位置していることが明らかとなった。さらにヒトの遺伝子地図との比較染色体地図分析を行ったところ、ニワトリ第2染色体q腕の一部とヒトの第8染色体q腕との間にかなり大きなシンテニーが存在することが明らかとなった。 今後、ヒトの遺伝子地図上からニワトリ筋ジストロフィーの原因遺伝子となりえる候補遺伝子を推定し、これら候補遺伝子のクローニングや多型解析により原因遺伝子の推定と同定が重要になると考えられる。
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