これまで本研究代表者は、マウスおよびウシ着床前初期胚の体外発育に及ぼすラット肝癌細胞(Reuber H35)の培養上清の効果を検討してきた。その結果、(1)同細胞培養上清中には、マウスの系統にかかわらず作用する2細胞期卵特異的分裂抑制因子(Fr.B25、部分精製終了)が存在するが、ヒト肝癌細胞培養上清中には存在しないこと、(2)同細胞培養上清中には、マウス4細胞期卵の体外発育を促進する効果が認められること、および9種類の蛋白質(76、60、49、38、34、31、24、22および18kD)が卵子に結合すること、(3)同細胞培養上清は、ウシ体外受精卵の体外培養における早期細胞死を抑制することを見い出してきた。本年度の研究では、Reuber H35細胞培養上清中に存在するマウス初期胚発育制御因子と、既知細胞成長因子との作用特性の差異について明らかにするために重要である、以下の結果を得た。 1.構造決定に必要なFr-B25を、Reuber H35細胞培養上清から大量調製した。 2.リバース・トランスクリプターゼ・ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(RT-PCR)法により、同細胞における形質転換増殖因子α、β1、上皮成長因子、肝細胞増殖因子、白血病抑制因子、幹細胞増殖因子の遺伝子は発現しているが、インヒビンα、アクチビンβ_A及びβ_B遺伝子は発現していないことを見いだした。 3.RT-PCR法により遺伝子発現が確認された細胞成長因子を単独で培養液に添加し、卵子発育に及ぼす効果について検討した。その結果、形質転換増殖因子α、上皮成長因子、幹細胞増殖因子に卵子発育促進効果が認められた。
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