鳥類の発生期および組織修復過程におけるギセリンの役割を解明するため、以下の項目を検討し、新たなる知見(未発表データを含む)を得た。 a)鶏筋胃由来のcDNAを用い、ギセリン遺伝子の上流の同定を試みた。現在、partial cloningを終了しており、今後、想定されるプロモーター部位の機能的領域を解析する予定である。 b)神経組織の発生と修復におけるギセリンの役割を検討した。ウズラの網膜発生時に抗ギセリン抗体を注入すると、網膜剥離を引き起こすことが判明した。さらに、先天的網膜剥離ウズラのミュータントでは色素上皮のギセリンが欠損していた。このことより、ギセリンは網膜の発生に不可欠であることが証明された(Neuroscience Lettersに発表した)。また、座骨神経の再生にもギセリンが関与することが判明した(投稿準備中)。今後、様々な増殖因子とギセリンの発現の関係を検討する予定である。また、鶏繊維芽細胞由来の合胞体の形成には核分裂と細胞膜融合が関与することが判明し(Can J Vet Resに発表)、細胞接着と細胞融合に関するギセリンの役割を解析するための基礎データとなった。 c)腫瘍におけるギセリンの役割を検討した。様々な腫瘍細胞株におけるギセリンの発現を検討した結果、癌細胞(卵管癌、腎芽腫)に強く発現し、良性の腫瘍や肉腫には発現しないことがわかった(投稿準備中)。今後、転移におけるギセリンの役割を解析する予定である。
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