虚血性心疾患はなおも重要な問題であり、とくに急性期を経過した後さらなる心筋細胞破壊を防止して障害を最小限に抑えることが重要と考えられる。心筋細胞保護の観点から、虚血時の膜構造破綻の過程と予防法を明らかにする目的で以下の研究を遂行した。すなわち、マウス由来C2C12細胞ならびにラット由来H9C2細胞に蛍光スフィンゴミエリンを取り込ませて共焦点レーザー顕微鏡下で膜を可視化し、ヨード酢酸およびロテノンにより虚血処理を行ったところ、1)細胞内に直径数十ナノメータの膜クラスターが形成され、経時的に増加した。同一サンプルの透過電子顕微鏡による観察により、このクラスターはリン脂質膜が正常な配列を失い折り畳まれた構造であることが確認された。2)活性酸素を可視化するジクロロフロオレスチンあるいはカルシウムの蛍光プローブであるFluo-3を用い、1)と同様の条件で同時観察を試みたところ、膜のクラスタリングは細胞質内カルシウム濃度の上昇と平行して発生していると思われた。3)α-トコフェロールは膜クラスタリングを遅延させ、細胞の平均生存期間を延長させた。2)の結果から、この効果は活性酵素消去よりむしろ膜安定化作用によるものと考えられた。これらの成果は投稿準備中である。
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