研究概要 |
本研究の目的は、1)小動物疾患における抗好中球細胞質抗体(ANCA)をはじめとする自己抗体の測定系確立と、2)小動物疾患とくに猫のウイルス性疾患において見逃されてきた自己抗体出現の有無の確認、そして3)小動物の感染症における自己抗体出現の機序および治療法について検討することである。 平成11年度における研究結果 犬および猫の各種自己抗体測定系の確立:ANCAの対応抗原であるmyeloperoxidase(MPO)とproteinase-3(PR3)については、ヒトの精製抗原を用いたELISA法を確立した。また犬および猫の好中球を基材とした間接蛍光抗体(IIF)も同時に行うことにより、より確実にANCAを検出できることも確認した。またMPOおよびPR3については犬および猫において現在cDNAクローニングを行っている。 2)猫のウイルス性疾患における自己抗体の検出:1)において確立された方法を用いて、猫のウイルス感染症とくに猫伝染性腹膜炎(FIP)における各種自己抗体の検出を行った。その結果、FIP自然感染猫ではANA、ANCA陽性例が存在することがIIF,ELISAを用いた系で確認された。しかし、FIP自然発症猫の中でもANCA抗体価にかなりのばらつきが見られた。そこで次に、ANCAとFIPの病態との関連性を検討するためにFIP実験感染猫におけるANCA抗体価の経時的な変動を観察したところ、ほとんどの症例で顕著な抗体価の上昇が見られた時期は神経症状や発熱などの臨床症状が現れ始めた時期と一致していた。また、高い抗体価を示した症例は急性経過をとり、臨床症状も激しく、安楽死後の病理組織学的所見でも重度の血管炎、非化膿性肉芽腫性病変が確認された。これらの結果は、ANCAが病態と相関して変動することを強く示唆するものであった。 現在ANCAが上昇する疾患についてさらに調査を行うとともにこれらの疾患の病因・病態とANCAとの関連性について、病理組織学的な検討を含めた研究を行っている。
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