研究概要 |
置換基の分布の異なる位置選択的置換セルロース誘導体二種(6-O-acetyl-2,3-di-O-benzoylcellulose(6A23B)と2,3-di-O-acetyl-6-O-benzoylcellulose(23A6B)およびその一方の置換基のみからなる誘導体二種(cellulose triacetate(CTA)と cellulose tribenzoate(CTB)を調製し、キラル分離相としてシリカゲルにコーティングし、置換基の分布とキラル識別能との関係を調べた。コーティングおよび充填の条件は、常法に従った。 中性のアリールアルコールの類縁化合物を供試試料とした場合、分離可能な化合物の数、分離度αなどの点でCTBがもっとも大きなキラル識別能をもつことが認められた。もっとも分離能が低かったのがCTAであった。このことは、供試試料とベンゾイル基間の相互作用が供試試料とアセチル基間の相互作用より強いためであると考えられた。位置選択的置換誘導体二種については、ともにこの二つの間の分離能を示したが、キラル識別の程度は導入された置換基の量から推察される順序6A23B>23A6Bではなく、23A6B<6A23Bであった。C-2位やC-3位に導入される置換基よりもC-6位に導入された置換基の方がキラル識別に強く影響することが認められた。 しかし、この傾向はラセミ化合物一般に敷延することは出来なかった。酸性、アルカリ性の化合物を含めて種々の化合物を供試試料とした場合、明確な傾向は観察されなかった。 検討した範囲では順相系、逆相系の溶離液の違いにより、分離できる化合物の範囲に違いは認められたものの、傾向の著しい違いは認められなかった。
|