研究概要 |
私達が最近発見したsyltaxin17(syn17)は、SNAREs(soluble NSF attachment protein receptors)の一つで、小胞体に局在することから蛋白質の小胞輸送に機能することが予想された。そこで本年度は、syn17の小胞体-ゴルジ体間における機能をsyn5(シスゴルジ体に局在)と比較しながら解析した。 (1)syn17の過剰発現によるドミナントネガティブ効果 i)小胞輸送に機能する蛋白質を培養細胞で過剰発現させるとオルガネラの構造が小胞化し細胞内に分散することが知られている。そこで、syn17を動物培養細胞で発現させたときの小胞体〜ゴルジ体中間区画(ERGIC)〜ゴルジ体の形態を間接蛍光抗体法で調べた。また、コントロールとしてsyn5についても同様に調べた。syn17とsyn5ともに過剰発現によってゴルジ体は分散していた。一方、ERGICはsyn5では変化なかったがsyn17では分散していた。 ii)小胞体からの蛋白質輸送への影響。syn17およびsyn5を過剰発現させた細胞における小胞体からの蛋白質の輸送を観察したところ、syn17の場合蛋白質は小胞体にとどまったままで輸送されていなかった。一方、syn5の場合は小胞体からの輸送は正常に起こりsyn5と同じ局在を示した。syn17の過剰発現によって、ゴルジ体から小胞体への輸送が阻害されることにより全体の膜系のバランスが壊れた結果と考えられた。 (2)抗syn17抗体を用いた免疫沈降実験 ラット肝臓の全膜画分を可溶化し、抗syn17抗体による免疫沈降実験を行い、小胞体-ゴルジ体間のSNAREs(Sec22b,membrinとrbet1p)との相互作用を各抗体でウエスタンプロット法により調べた。抗syn5抗体で免疫沈降を行ったところ、以前の報告通りSec22b,membrinとrbet1ともに結合していたが、syn17はSec22bのみと結合していた。これは、syn17が機能する際にsyn5とは異なった複合体を形成することを示唆するものである。 以上の結果から、syn17が小胞体-ゴルジ体の小胞輸送に関与すること、またsyn5とは異なったステップで機能することが明らかになった。
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