単クローン抗体mMC31の認識する抗原MC31は精子鞭毛の細胞膜に局在する膜蛋白質である。この単クローン抗体mMC31を用いて、成獣ラットの精巣から抽出したmRNAで作製したcDNAライブラリーからMC31の遺伝子をクローニングしたところ、MC31は免疫グロブリンスーパーファミリーに属すラットCE9と同一であることがわかった(以下MC31/CE9とする)。そこで、成獣ラットの精巣においてMC31/CE9の遺伝子発現と蛋白質発現を検討した。遺伝子発現についてはノーザンハイブリダイゼーション法とin situハイブリダイゼーション法により検索した。MC31/CE9のmRNAは精子発生過程においてB型精粗細胞から発現し始めることがわかった。mRNAの発現はすべてのステージの精母細胞にみられ、減数分裂後もstep 11の伸長精子細胞までほぼ恒常的に認められ、これ以降徐々に減少しstep 15 の伸長精子細胞まで認められた。一方、蛋白質発現については免疫組織化学によって検索した。MC31/CE9の蛋白質発現は、step 8以降step 19までの精子細胞の鞭毛にもっとも強い免疫反応が認められた。さらに、早期厚糸期の精母細胞とstep 8からstep 13の伸長精子細胞という異なる時期のゴルジ装置にも中等度の免疫反応が認められ、中期厚糸期の精母細胞からstep7の精子細胞においてゴルジ装置の免疫反応が一過性に消失することが確認された。本年度の研究によりラット精巣におけるMC31/CE9の遺伝子と蛋白質を発現する細胞種が明らかとなった。さらに、鞭毛に発現するMC31/CE9の産生にはmRNAの転写調節のほか、転写後の調節によりその蛋白質発現が強く制御されていることが示唆された。
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