研究概要 |
蛍光顕微鏡観察において、p-phenylenediamine(PPD)、DABCOなどの退色防止試薬を封入剤として用いることにより蛍光の退色を防いできた。しかし、このような手段を用いても、退色をなくすことは不可能である。経時的観察や共焦点レーザー顕微鏡による3次元立体観察のような、同一視野を何度も励起することにより得られる画像では、蛍光の退色がある限り、真の経時的輝度変化、真の3次元画像が得られていないともいえる。本研究では、2次元(経時的)観察における蛍光輝度を解析し、退色の原理を明らかにし、それを基に、経時的観察の退色を補正する関数式を導くとともに、その補正を実現するための画像処理ソフトウエアの開発を行い、画像を補正することで、退色のない画像観察を可能にした。固定した細胞などを、FITC,TRTC-phalloideinの蛍光試薬により染色し、PPD,DABCO,Slow Fade light,FluoroGuarde,ParmaFluor,Prolongの退色防止剤を用いて試料を封入し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察を行った。ひとつのフォーカス面を数十回操作することにより、退色による蛍光輝度の変化を、デジタル画像データとして集積した。集積したデータの蛍光輝度変化を画素ごとにコンピュータ解析した結果、蛍光輝度変化を示す式を、EM(t)=EMe^<-t/A>とし、係数AをAntiFade Factorとした。FluoroGuarde,ProLongのAntiFade Factorが大きく退色防止能力が高いことが明らかになった。また、この式から蛍光輝度の補正式をもとめ、2次元補正画像を得るための画像処理ソフトウエアを開発した。これにより、約50%程度退色した画像においても、ほぼ元の画像への補正が可能であることが認められた。
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