研究概要 |
本年度は,ライディッヒ細胞のホルモン合成と隣接する精細管の精上皮周期との関連につき検討した。ホルモン合成能の指標として,ステロイドホルモン代謝に関わる水酸化ステロイド脱水素酵素(HSD)の酵素活性を酵素組織化学的に検出した。3βHSD,17βHSD及び11βHSD酵素活性検出に2mM dehydroisoandrosterone,testosterone及び11β-dehydroxyandrostendioneを基質としてそれぞれ用い,マウス精巣の未固定クリオスタット切片と反応した。いずれの酵素活性も精巣の間質にのみ検出された。各精細管に隣接する間質のライディッヒ細胞塊毎に平均染色強度を数値化したところ,17βHSD,11βHSD活性はステージ6〜7の精細管近傍で最も強く,ステージ10〜12,1〜2で弱かった。一方,3βHSD活性にはこの変化は認められなかった。更に17βHSDに関して,精巣での発現が知られる17βHSDtype3及びtype4mRNA発現をin situ hybridization法にて検出した。cDNAよりdigoxigenin標識cRNAを作製しプローブとして用いた。17βHSD type3mRNA発現はライディッヒ細胞にのみ強く認められ,一方,type4mRNAは精細管内の各細胞にも発現していた。このことから,酵素組織化学的に検出した17βHSD活性は主に17βHSDtype3に由来する反応と考えられる。17βHSD活性強度の変化は,ライディッヒ細胞のホルモン合成能に影響を与え,これに伴いアンドロゲン分泌量も変化すると推測される。ライディッヒ細胞のアンドロゲン分泌量は,隣接する精細管の精上皮周期と連動して変化し,精細管上皮周期形成に関与すると考えられる。
|