研究概要 |
【目的】TNF-αは心不全、急性心筋梗塞等で上昇することが報告されているが、その電気生理的作用については不明な点が多い。今回TNF-αの遅延整流K電流(IK)に対する作用を検討した。【方法】単離モルモット心室筋細胞を全細胞型パッチクランプ法に供し、保持電位-40mVから、2秒のtest pulseを種々の膜電位まで加え、定常電流と末尾電位を測定した。細胞外は5.4mMK、細胞内は150mMKとし、nisoldipine(2μM)を加え、L型Ca電流を抑制した。全ての実験は37℃で行った。【結果】TNF-αは無刺激時にはIKを抑制しなかった。Isoproterenol(lSP)(20nM)にて増強時にIKを濃度依存性に抑制した(IC50 116±U/ml,Bmax 107±17%)。また、抑制には電位依存性は認めなかった。さらに、Histamine(250nM)、Forskolin(500nM)で増強されたIKも同様に抑制し、あらかじめcAMP(1mM)を細胞内投与しIKを増強した場合には抑制を認めなかった。また、TNF-αの効果はphosphatase inhibitorであるsodium orthovanadate(100μM)あるいは、phosphodiestarase inhibitorであるisobutylmethylxanthine(100μM)存在下でも抑制は同様に認められた。百日咳毒素(PTX)処理後でも同様の抑制効果が認められた。【総括】TNF-αは、1)ISP誘発性のIKsを濃度依存的に抑制した。2)Histamine、Forskolin誘発性のIKsを抑制し、cAMPで増強されたIKsは抑制せず、cAMPの調節に関与していると考えられた。3)TNF-αが心不全、心筋梗塞時などカテコラミン分泌増加時にIKsを抑制し、活動電位時間を延長させ、催不整脈性に働く可能性があることが示唆された。
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