植物毒のグラヤノトキシンは膜電位依存性Na^+チャネルに結合してそれを持続的に開放させることで知られている。その作用の対象はチャネルの活性化ゲート開閉に関わる電位感知部と不活性化ゲートであり、このことはグラヤノトキシン結合部位がこれらの機構に直接関与する作用部位である可能性を示している。従って、その作用部位を追求することによってNa^+チャネルの不活性化ゲート、特にこれまで不明であった「遅い不活性化ゲート」の分子メカニズムの全容を明らかにすることが本研究である。 これまでに申請者は、「遅い不活性化ゲート」の分子メカニズムを解明するためのさきがけとして、Na^+チャネルに点変異を導入することによってグラヤノトキシンの作用部位の探索を試みた。その結果、ラット骨格筋由来Na^+チャネルのドメイン1セグメント6に位置するl433及びN434、並びにドメイン4セグメント6に位置するl1575、F1579及びY1586の5箇所のアミノ酸がグラヤノトキシンの作用部位であると結論し、公表した。 さらに、ラット骨格筋由来及び心筋由来Na^+チャネルについてグラヤノトキシン感受性を調べた結果、前者のチャネルが有意に高いグラヤノトキシン感受性を示すことを明らかにしている。この感受性の差異を手掛かりに、二種間でのキメラチャネルを作成しグラヤノトキシンの作用を比較することで、新たなグラヤノトキシンの作用部位を発見することが期待できる。現在その作用部位がドメイン1領域内のセグメント6以外にも存在することを裏付けるデータを獲得し、さらなる解析を進めながら公表するための準備を行っている。
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