1)細胞外ATPによるI_Kの増大反応におけるチロシン燐酸化機序の関与を検討するために、チロシン燐酸化阻害剤であるgenisteinやその不活性アナログであるdaidzeinによる反応の修飾を検討したところ、daidzeinはATPによるI_Kの増加率に影響を与えなかったが、genisteinは有為に増加率を抑制した。さらにチロシン脱燐酸化阻害剤であるdephostatinを細胞に負荷したところ、細胞外ATPによるI_Kの増大反応は不可逆性を示した。これらの事より本反応におけるチロシン燐酸化機序の関与が示唆された。以上の結果は、心筋I_Kの調節に関与する新たな細胞内情報伝達機序を示唆しており、心筋細胞に存在する、P_<2Y^->受容体を介した心筋活動調節機構の解明に寄与するものと考えられる。 2)nicardipineやnisoldipine、BAYK8644等のdihydropyridine(DHP)系薬剤のムスカリン性K電流(I_<K(ACh)>)に及ぼす効果をwhole-cell patch clamp法を用いて検討したところ、いずれの薬剤もI_<K(ACh)>に対して抑制性に作用した。各種薬剤によるI_<K(ACh)>の抑制率をさらに検討したところ、いずれの薬剤においてもACh投与によって活性化された電流およびGMP-PNPの細胞内負荷によって活性化された電流の両者に対する抑制率がほぼ等しいことが認められた。以上のことより、これらのDHP系薬剤によるI_<K(ACh)>の抑制反応はG_Kの活性化より下流のレベルで起こっていると考えられた。
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