モルモット単離心筋にホールセルパッチクランプ法を適用して心室筋IKにおける細胞外ATPの作用について検討した。その結果、細胞外ATPはP2Y受容体および百日咳毒素非感受性G蛋白を介してIKを増大させた。細胞外ATPはisoprenaline(1μM)もしくはTPA(100nM)によるIKの増大反応に対して付加的に作用したため、PKAやPKCは関与していないと考えられた。H-7存在下でも反応が認められ、この点からもPKCの関与は否定的であった。次に、G蛋白の効果器としてPLCの関与を検討した。Neomycin 500μMのpreincubationでPLCを抑制するとα刺激であるフェニレフリンによるIKの増大反応は消失したがATPによるIKの増大反応には影響を与えなかった。このことは本反応にはPLCが関与していないことを示唆する。さらにATP-γSやokadaic acidを細胞内投与した場合、ATP wash時のIKの減衰過程は遅延した。この結果はリン酸化反応の関与を示唆する。IK増大反応はgenistein存在下では有意に抑制されたが、daidzeinではほとんど影響をうけなかった。さらにチロシン脱リン酸化阻害剤のdephostatinの細胞内投与によってATP wash時のIKの減衰過程は遅延した。これらの結果から、P2Y受容体刺激によるIKの増大反応におけるチロシンリン酸化機序の関与が示唆された。
|