研究概要 |
10日以上、一日のうち一定時間帯にのみくり返し暑熱に暴露されたヒトでは、深部体温や体温調節反応がかつての暑熱暴露時間帯に一致して変化する。これは、一日のうち一定時間帯の暑熱暴露時間を生体が記憶し、実際に暴露がなくても暑熱に対する体温調節反応を起こすためと考えられる。運動は、熱を発生させ深部体温を上昇させるため、暑熱負荷となり得る。一日一定時間帯に運動鍛練を行うと、運動とそれに伴う心肺機能、体温調節機能等の変化は毎日同じ時間に繰り返される。したがって、運動鍛練による変化は、鍛練を実際に行った時間帯に強く起こると予想さる。本研究の目的は、十日一定時間帯にくり返し運動する方式で運動鍛錬されたヒトの体温調節機能と運動パフォーマンスが、かつて運動を行った時間帯と他の時間帯とで異なるか否かについて検討する。 日ごろ激しい運動を行っていない健康成人男子4名を被験者とし,5日間に渡り毎日、14時から16時20分まで毎日決まったメニューによる自転車エルゴメータ運動を行わせた。メニューは、最初の10分間は30%、続く10分間は40%、最後の40分間は50%VO_2maxの強度で合計60分間の運動を1セットとし、20分間の休憩をはさんで一日2セット行わせた。 運動鍛練により被験者の最大酸素摂取量は有為に増加した。運動鍛練開始前、及び運動鍛練終了直後の2回、環境温25℃相対湿度40%下で、漸増的負荷による自転車エルゴメータ運動を30分間行わせた。運動負荷は初めの10分は40%Vo_2max、次の10分は60%Vo_2max、最後の10分は70%Vo_2maxとした。運動中の心泊数・深部体温の上昇、主観的運動強度は運動鍛練により減少したが、実際に運動を行った時間帯の15時付近とそうでない9時付近の運動間には著名な差異を認めなかった。 来年度は被験者の数を増やすとともに運動鍛練期間を長く設定しさらに検討するする必要があると思われる。
|