我々は、雄性ラットにおけるGABAニューロンによるGnRHニューロンへの神経入力が、18日から29日齢の未成熟期に形成される可能性を示してきた。本実験ではまず、GnRHとGABA合成酵素の一つであるGAD67に対する抗体を使って、雄性ラットにおけるGABAニューロンの生後変化に関する免疫組織学的検討を行った。その結果、GnRHニューロン数の成熟過程における変化は認められなかったが、OVLT外側領域でのGAD67陽性細胞数は16日齢では比較的少なく、25日齢では16日齢の4.6倍、30日齢では6.4倍、10週齢では7.4倍に増加して行くことを見い出した。GABA_A受容体はα、β、γ、δサブユニットが様々なパターンで組み合わされた5量体により形成されており、ラット脳における各サブユニットの構成比率は個体の発達と成長に伴って変化することが知られている。そこで次に、GABAニューロンのGnRHニューロンに対する神経連絡を証明し、GnRHニューロンに発現するGABA_A受容体の成熟変化をサブユニットレベルで検討するために、まずGABA_A受容体β2/3サブユニットとGnRHの二重免疫染色を行い、これらのサブユニット陽性のGnRHニューロン数の成熟変化について検討を行った。16日齢群、10週齢群を用意して検討した結果、両群で多くのGnRHニューロンがβ2/3サブユニット陽性であったが、β2/3サブユニット陽性のGnRHニューロン数は、16日齢の未成熟群と比べ、成熟群では有意に増加した。また、胎生期のolfactory placodeのGnRHニューロンについても同様の二重染色を行ったところ、β2/3陽性GnRHニューロンはほとんど認められなかった。また、α1サブユニットとGnRHの二重免疫組織についても現在検討中である。
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