組織構築を残したラットの動脈における個々の平滑筋細胞のCa^<2+>応答を可視化し、外部から全く刺激をしない状態でも自発的なCa^<2+>オシレーションを観察した。このCa^<2+>濃度上昇は、ノルアドレナリンのCa^<2+>オシレーションのピークサイズより小さいことより、Ca^<2+>リプルと名付けた。Ca^<2+>リプルは、アンジオテンシンIIに起因すると考えられ、Ca^<2+>リプルはACE阻害薬で消失することよりアンジオテンシンIIは局所レニン・アンジオテンシン系により産生されるものと示咳された。Ca^<2+>リプルと血圧調節に関わりを調べる目的で、高血圧自然発症ラット(SHR)の動脈を用いてCa^<2+>リプルを調べると、カルシウム波の伝わるスピードが若干上昇している傾向が認められた。しかし、Ca^<2+>リプルの出現率、ピークの大きさ、オシレーションの頻度は対象ラットと差が認められなかった。そこで、Ca^<2+>リプルとアンジオテンシンIIとの関わりを追求するために、アンジオテンシノーゲン欠損マウス(米国との共同研究)の血管壁を用いてCa^<2+>リプルを解析したところアンジオテンシンIIの生成が阻害されているにも拘わらず、コントロールマウスと同様にCa^<2+>リプルが観察された。アンジオテンシノーゲン欠損マウスで観察されたCa^<2+>リプルはアンジオテンシン受容体拮抗薬やACE阻害薬で消失するという従来のCa^<2+>リプルの性質を示した。全く予想外の結果を示したので、これが何に起因するのかを明らかにするために現在さらなる解析を進めている。
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