アクチン調節タンパク質ゲルソリンは、重合核形成によるアクチン線維伸長の促進(Nucleating)、アクチン線維の切断(Severing)およびその末端の保護(Capping)という3つのアクチン重合調節機能を持つ。ゲルソリンはこれらの両面性の機能を通じて重合-脱重合という両局面を制御し、細胞運動において重要な役割を担っている。ゲルソリンは、1次構造上、類似性のある6つの機能ドメイン(G1-G6)からなるが、我我アクチン線維の切断(Severing)活性に必須であるG1ドメインを欠失したG2-6変異体は、ゲルソリンのSevering活性をin vitroで抑制し、発光オワンクラゲ由来の蛍光タンパク質GFP(Green Fluorescence Protein)との融合タンパク質としてG2-6機能抑制変異体をCos7細胞で一過性に発現したところ、接着性細胞のアポトーシスに特有な形態変化が認められ、細胞死が起こることを見い出した。本研究は、アクチン調節タンパク質ゲルソリンの機能抑制変異体によるアポト-シス誘導の分子機構解明することを目的とする。 平成11年度は、第一段階として、テトラサイクリンによる発現制御システムを用いてG2-6機能抑制変異体の発現誘導可能な細胞株の樹立を進めた。しかしながら、現段階でG2-6機能抑制変異体の発現がうまく誘導されるクローンの樹立に至っていない。そこで、多くの細胞系で効率に遺伝子導入が可能なアデノウイルスの発現システムを使用する方向性を考え、G2-6機能抑制変異体を含む様々なゲルソリンの欠失変異体を、アデノウイルス・ペクターに組み込み、現在、ゲルソリン欠失変異体のアデノウイルス・ペクターを得ることができた。 今後、これらのペクターを用いて、1)これまでに知られている細胞死の情報伝達経路が関与するかどうか、2)G2-6変異体の発現した時に、どの様な遺伝子発現の変化があるかをディファレンシャル・ディスプレイ法により検索していく予定である。
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