ヒトの2コンポーネント系センサー蛋白を検索する目的で、ヒトEST群中から予測蛋白構造がヒスチジンリン酸化酵素に相同性を示すcDNAを選びだし大腸菌内に導入発現させ、大腸菌の2コンポーネント系ヒスチジンリン酸化活性の変化を指標に実験を行いました。その結果、以下の所見を得ました。 1.1つのヒト遺伝子産物(HPR3と命名)が、大腸菌蛋白のヒスチジンリン酸化を増大させることを見出しました。現在、このリン酸化変化がHPR3のヒスチジンリン酸化酵素活性に直接起因するものかどうか解析を進めています。 COガスを合成する酵素であるヘムオキシゲネースが細胞に及ぼす作用を明らかにするために、ヘムオキシゲネース遺伝子欠損マウスの初代神経培養系を用いた実験を行い以下の結果を得ました。 2.ヘムオキシゲネース遺伝子欠損マウスの小脳顆粒細胞ではアポプトーシスによる神経細胞死が亢進しており、この細胞死は脳虚血状態でさらに増大する。 3.ヘムオキシゲネースのcDNA遺伝子を神経細胞に導入発現させることにより、この神経細胞死を制できた。 NOガス放出がもたらす神経可塑変化の細胞機構を明らかにする目的から、グルタミン酸刺激により神経細胞内に急速にmRNA発現誘導が生じる遺伝子をディファレンシャルクローニング法で検索した結果、 4.生体ポリアミンの代謝酵素であるスペルミジン/スペルミンN1アセチル転移酵素(SSAT)のmRNA発現誘導が、脳全体の刺激に対しては大脳皮質と海馬の領域に、海馬LTP誘発刺激に対しては海馬の顆粒細胞に顕著に認められることを見出しました。
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