【研究目的】 本研究は実験動物を用いて中枢性GH(脳内発現性GH)の基礎的な機能解析を行うことを目的とした。中枢においてGH遺伝子が主として外側視床下部で発現することを見出していることから、本研究では、先ず第一にこの神経野に関連してみられる機能(摂食行動、活動性等や意欲・情緒)とGHの発現および作用との関連について検討した。 【研究計画・方法】 11年度計画 自発活動量と脳内GH遺伝子発現量の関係について Wistar系雄ラット20匹を輪回し数を経時的にカウントできる自由回転ケージを用いて飼育し、自発活動量を測定した。自発活動量の違いにより高活動群、中程度活動群、低活動群に分け、それぞれの群での脳内GH遺伝子発現と下垂体GH遺伝子発現および血中GH濃度を測定し、活動量との相関性について比較・検討した。 【結果】 1)活動量: 20個体の1〜10週目までの1日あたりの活動量は平均4025.04±3180.18回転(m)であり、分散分析を行った結果、統計的有意性はみられなかった。そこで、活動量が平均値±1000mを境に高活動群(H群;6723±951m)、低活動群(L群;1396±341m)及び中程度活動群(M群;3658±831m)に分けた(H>M>L、それぞれp<0.01)。また、活動量と体重は有意な正の相関を示した。 10週目以降、活動量は徐々に減少し始め、14週目には平均1025.04±205.18回転(m)となりその後一定となった。またグループ間の有意な差も消失した。 2)脳内及び下垂体GH遺伝子発現と血中GH濃度: 14週間の飼育の後、断頭によりサンプリングを行い脳内及び下垂体GH遺伝子発現と血中GH濃度を測定したが、グループ間に有意な差は認められなかった。飼育後14週ではすでに活動量の違いが消失していることから、脳内及び下垂体GH遺伝子発現についても同様な現象が起きているものと考えている。 現在、活動量に顕著な違いがみられる飼育後4〜5週目での脳内及び下垂体GH遺伝子発現と血中GH濃度について検討中である。今後、12年度の研究実施計画に基づき研究を進行させる予定。
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