本研究ではEGFレセプター高発現CHO細胞およびCOS-1細胞にGnT-III遺伝子を導入することによって、EGFシグナル経路にどのような変化が起こるかを検討した。まず^<125>I-EGFを用いた実験によってGnT-III導入細胞ではEGFレセプターのEGF結合能が低下していること、またインターナリゼーションの速度が低下していることがわかった。このインターナリゼーション速度の低下の機序を検討したところ、GnT-III導入細胞ではインターナリゼーションに関与すると考えられているEGFレセプターのCaInドメイン中の^<996>Q-^<1022>Tに修飾がおこっていることが示唆された。キナーゼインヒビターを用いた実験ではこの修飾がセリン・スレオニンのリン酸化であることが示唆された。この^<996>Q-^<1022>Tという配列はEGFレセプターの細胞内ドメインに存在するため、糖鎖に直接関係した修飾ではないと考えられる。つまりGnT-III遺伝子導入によって二次的な作用でEGFレセプターのCaInドメイン中にリン酸化がおこり、レセプターのインターナリゼーションが阻害されたと考えられる。さらにEGF刺激によるERKのリン酸化をみたところ、GnT-III遺伝子を導入した細胞ではERKのリン酸化のアテニュエーションに遅延がみられた。 現在精製EGFレセプターのペプチドマッピングをおこなうことにより、その修飾の位置と種類の同定を行っている。今後、この修飾がEGFシグナル経路にどのように影響するかをさらに検討する予定である。
|