世界第4と5例目である、日本人の凝固第XIII因子A、Bサブユニット同時欠損症(I型欠損症)のDNA検体を入手し、以下の結果を得た。 (1) I型XIII因子欠損症の症例と家族の白血球からDNAを抽出し、PCRによりBサブユニット遺伝子の全エクソンを増幅し、Bサブユニット遺伝子の5′領域、エクソン、イントロン/エクソン境界領域などの塩基配列を決定し、正常の遺伝子のそれと比較したところ、イントロンA/エクソンII境界のag→(-)gの一塩基欠失とエクソンIX内のG塩基欠失が同定された。 (2) このようにして同定した遺伝子上の2つの変異を、PCRと制限酵素による切断反応によって、本人及び家族のDNA検体で遺伝子診断したところ、第4、5例は、世界第1例と同じag→(-)g変異を持つことが分かった。Bサブユニット遺伝子の3′領域の2つの多型性を調べたところ同一であったので、3例とも同じハプロタイプ上に変異が存在することが示唆された。これらの症例は、金沢、福島、福岡の3ケ所に在住し、血縁関係は認められないが、上記の結果より、変異は創始者効果によるものと考えられた。 (3) エクソンIXの変異を持つcDNAと、正常のcDNAを別々に哺乳類細胞擁の発現ベクターに挿入して、細胞及び蛋白質レベルで解析したところ、変異体は小胞体に滞留して分解され、分泌されないことが判明した。 (4) 免疫組織学的解析により、変異体は小胞体に存在し、ゴルジ体への輸送が障害されていることが分かった。従って、Bサブユニットにおける一塩基欠失は、フレームシフトを起こし、スシドメインの構造に変化を惹起して、小胞体の品質管理機構によって分解処理されるものと思われる。
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