シクロオキシゲナーゼ(COX)-2誘導の転写調節機構ならびにグルココルチコイドによるその抑制の仕組みについて骨芽細胞を用いて調べる過程において、以下の2点について明らかにした。 1.サイトカインによるプロスタグランジン(PG)I受容体の誘導 骨芽細胞ではPGによりCOX-2が誘導されることから、この細胞におけるPG受容体の発現を調べた。その結果、PGE受容体(EP1、EP2、EP4)の発現、PGF受容体の構成的発現とTNFαによるPGI受容体の誘導が明らかになった。PGI受容体の誘導にはCOX-2を含む何らかの蛋白質の発現の関与が示唆され、さらにこの受容体の誘導はグルココルチコイドにより抑制された。現在、PGI受容体誘導の転写調節機構について検討している。 2.フムロンによるCOX-2の転写抑制 グルココルチコイドによるCOX-2の転写抑制機構を調べているうちに、骨吸収抑制因子としての報告があるビールホップより抽出されたフムロンがCOX-2の転写を抑制することが明らかになった。フムロンはCOX-2の誘導に関わるNF_KBやNF-IL6の転写活性を抑制するが、グルココルチコイド受容体とは結合せず、グルココルチコイドとは異なる経路でその作用を発揮していることが示唆された。現在、フムロンの詳細な抑制機構とin vivoにおける抗炎症作用を調べている。 COX-2誘導に対するグルココルチコイドによる抑制機構については、いくつかの報告があるが、未だに直接的な作用点が明らかになっていない。今後、COX-2誘導に関わる転写因子の活性化に注目してグルココルチコイドによる影響を調べていきたい。
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