カルネキシンは粗面小胞体(ER)に存在するCa^<2+>結合性の分子シャペロンであり、糖タンパク質のモノグルコシル化高マンノース型糖鎖を認識するレクチン機能をもつ。平成11年度は、カルネキシンについてその基質タンパク質認識機構の解明を行うため、カルネキシンin vitroフォールディングアッセイ系の作成と解析を行った。具体的には、Soy bean agglutinin(SBA)に、ラット肝から精製したUDP-グルコース糖タンパク質グルコース転移酵素(UGGT)を用いて、酵素的にグルコースを付加させてモノグルコシル化糖鎖(Glc1Man9)をもつSBAを作成し、カルネキシンの認識する基質とした。これ以外にも、SBAからEndoHで糖鎖を除去した糖鎖をもたないSBAを作成する。これらSBAを6M塩酸グアニジンで変性した後、熱処理でタンパク質の擬集を誘導する。カルネキシンを添加して、その基質の擬集抑制能を測定(Light scattering)することにより、シャペロン作用を評価した。カルネキシン基質タンパク質複合体については、HPLCによるゲルろ過、Dynamic Light Scattering、分子内蛍光の測定、電子顕微鏡(Negative staining)などにより複合体の生成分解のキネティクスを解析した。以上により、カルネキシンは単なるレクチンではなく、糖タンパク質のモノグルコシル化糖鎖を認識するとともに変性したポリペプチド部分をも認識する分子シャペロンであり、その分子制御機構にATPが関与することを明らかにした。
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