研究概要 |
1、Masp1遺伝子の欠損マウス(Masp1(-/-))の解析。前年度に引き続き、Masp1欠損マウスに関して解析を行った。ある種のインフルエンザウイルス(H1N1)に対する感染実験を試みたところ、有意にMasp1(-/-)が野生型マウス(C57BL/6J)に比べ、生存率が低いことがわかった(20日生存率が野生型約80%、Masp1(-/-)約20%であった。)。このことはインフルエンザの初期感染にMasp1蛋白が関与することを明らかにした。さらにMasp1(-/-)は有意に同腹の野生型の仔マウスに比べ、小さいことがわかった。Masp1が仔の成長過程にどのように影響するのかはさらに解析をする必要である。さらにMasp1遺伝子から新たにMasp3という蛋白が合成されることが報告され、Masp1(-/-)はMasp3も欠損していると期待できる。このことを実験的に証明した後、前年度と本年度に得られた結果を含めた論文をまとめる予定である。 2,Masp2(Smap)遺伝子の欠損マウスの作製と解析。 Masp2とSmapは同じ遺伝子から転写される。Smap特異的なエクソンが存在し、このエクソンを破壊したマウスの作製を計画した。これにより、Smapの機能を明確にすることができる。現在、遺伝子を改変したES細胞の作製は成功しており、このES細胞を用いてKOマウスを作製中である。この実験を遂行中にイギリスのグループがMasp2のL鎖を破壊したマウスの作出に成功した(現時点で未発表)。このマウスはMasp2のみ欠損していることが期待できる。今後の展開として我々のMasp1特異的欠損マウスとイギリスのグループのMasp2欠損マウスを比較することで、未だ明確にされていない両蛋白の役割の違いに関して詳細に検討できるものと思われる。
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