微少な細胞を用いた遺伝子発現解析法について検討するため、ヒト大腸がん培養細胞株HT29を用い、10000、1000、100、50、10個の細胞をそれぞれ含む細胞lysate希釈系列を作製した。これらから、totalRNAを抽出し、細胞骨格蛋白の1つであるβ-actinおよびDNAのメチル化を触媒する酵素である5'-cytosine-DNA-methyltransferase(MTase)の遺伝子を標的としたreverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)法を行った。β-actinでは、細胞数10個までの希釈系列すべてにおいて、増幅が検出された。MTaseでは、用いた3種類のprimerのうち、1種類で、β-actinと同様に、細胞数10個まで増幅が認められた。次に、培養細胞にhematoxylin-eosin(H.E.)染色を施したスメアならびにセルブロック標本、および大腸がん凍結組織のH.E.染色標本を作製し、microdissection法により、100、50、10個の細胞をそれぞれ採取した。Microdissection法としては、レーザー光を利用するPixcell Laser Capture Microdissection SystemおよびPALM Microbeam Systemを用いた。採取した細胞から、total RNAを抽出し、MTaseを標的としたRT-PCR法を行った。いずれの標本とも、3種類の細胞数すべてで増幅が検出された。 現在、competitive RT-PCR法ないしreal-time RT-PCR法によるこれらの材料を用いた遺伝子発現の定量的解析法について検討している。
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