DNAのメチル化を触媒する酵素である5'-cytosine-DNA-methyltransferase(MTase)の遺伝子を標的としたcompetitive reverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法を行うため、ヒト大腸がん培養細胞株HT29を用い、4種類のcompetitor(G3P226、G3P452、AC392、pBMT)を作製した。これらのうち、AC392を用いたcompetitive RT-PCRでは、目的とするバンドのみ検出され、MTaseのみ標的としたRT-PCRにおける増幅効率と最も類似していたため、実際の発現量の測定にはこれをcompetitorとして使用することとした。 10000、1000、100、50、ならびに10個のHT29の細胞より、それぞれtotal RNAを抽出して上記の通りcompetitive RT-PCRを行ったところ、推定されたcDNA量はそれぞれの細胞数にほぼ相関していた。このことから、MTase発現の定量的解析法としての本実験の有用性が示された。 大腸の凍結組織材料よりhematoxylin-eosin染色標本を作製し、Pixell Laser Capture Microdissection Systemを用いて、がん部と非がん部よりそれぞれ100個前後の細胞を採取した。これらの細胞よりtotal RNAを抽出し、competitive RT-PCRを行ったところ、がん部のMTaseの推定cDNA量は非がん部の約3.8倍であった。この結果は、MTaseの発現が非がん部よりがん部に多いという従来の報告とほぼ一致していた。
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