研究概要 |
これまで、肺癌を中心に、p16蛋白の発見、p16遺伝子のプロモーター領域のmethylationを検討してきたが、近年、p14^<ARF>遺伝子が、p16遺伝子の上流近傍に別個のpromoterとexon 1βを持ち、exon 2をp16と共有し、alternative splicingによりp16蛋白と異なる蛋白質を生産していることが明らかとなった。p14^<ARF>の発現は、p16非依存性にG1,G2cell arrestを惹起し、細胞増殖調節に重要な機能を担うと考えられている。更にp14はMDM2に結合し、MDM2を介したp53の分解を中和していることが明らかにされた。翻ると、p14の発現低下はp53の機能消失を促進することになり、p14^<ARF>が癌抑制遺伝子としてp53遺伝子の異常のない癌化の過程に関与している可能性が取り沙汰されている。しかしながら,p14蛋白の腫瘍における発現、発現低下の機序については殆ど知られていない。一方、ルゴール染色法の普及により、早期食道扁平上皮癌が発見されるようになり、その発生機序の分子生物学的解明が期待される。従って、p16,p14の異常が食道早期扁平上皮癌の癌化にどの程度関与を調べる為、先ずp16,p14遺伝子のpromoter領域のmethylationの有無をmethylation specific polymerase chain reaction(MSP)で検索した。(方法)早期食道扁平上皮癌症例31例について、上皮内癌部分、或いは上皮内進展部の腫瘍細胞をmicrodissectionし、DNA抽出後、sodium bisulfiteで化学修飾し、MSPを行った。(結果)病理組織標本を用いてのMSP法が可能であることが実証された。p14遺伝子のpromoterに関しては,methyaltionは見出されず、早期食道癌ではp14遺伝子のmethylationは関与していないと考えられた、またp16遺伝子methylation陽性も1/13と低頻度であった。次年度は、p16,p14蛋白、mRNAの発現を、免疫組織学的或いはin situ hybridization法により検索し、Rb蛋白質の発見、p53遺伝子の異常との関連について検討する。また、癌の進展とp16,p14遺伝子のmethylationの関連を肺癌、食道癌をはじめ種種のヒト癌で調査する予定である。
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