本年度は画像取り込みをこれまでよりも安定性・再現性を高めるため顕微鏡の焦点面移動を電動化しコンピュータでコントロールできるよう装置を作製、組み込んだ。この結果、これまでは顕微鏡の微妙な操作が必要であった部分が改善した。そしてこれまでに作成したソフトウェアを利用し、症例を収集し3次元的解析の1つを試みた。症例はアスペルギルス肺炎のPAS染色標本、カリニ肺炎のグロコット染色、進行性核上麻痺の異常τ蛋白染色、卵巣MMMTのPTAH染色について行った。まず焦点深度が深い像が鮮明に得られるか確認するため、我々が以前に考案したアルゴリズムによる再構築像を形成した。その結果、アスペルギルス菌は菌の隔壁構造がやや明瞭となった。カリニ原虫は三日月状の構造が明瞭となった。異常τ蛋白を取り込んだグリア細胞は細胞突起が非常に長く明瞭に観察された。MMMTは観察しにくい横紋構造がよく現れた。いずれも通常の顕微鏡写真よりも優れた画像を得ることができた。次に3次元的な構造を明らかにするために標本を左右にわずかに傾け、それぞれの再構築画像を形成した。これらの画像を左右に並ベ、3次元構造を観察した。この結果、立体視は可能であったものの、その立体感は弱く3次元的な理解や定量化は困難であった。この原因は顕微鏡の対物レンズは高倍率のものは作動距離が短いため標本を傾ける角度が非常に制限されることにあった。次年度は標本を傾けることなく3次元的解析ができるようにソフトウェア的に良いアルゴリズムをいくつか検討する予定である。そして最も良い結果が得られたものを採用し、病変の定量的評価、良悪性の判断に応用する予定である。
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