隆起性皮膚線維肉腫(Dermatofibrosarcoma protuberans;DFSP)19例のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて、線維肉腫様成分の有無、フローサイトメトリーによる核DNA量、免疫組織化学的に細胞増殖マーカーの標識率とp53蛋白の過剰発現を検索し、これらの結果と再発などの臨床病理学的結果と比較検討した。また、皮膚線維腫、悪性線維性組織球腫、線維肉腫との比較検討も行った。その結果、DFSPでは、原発腫瘍よりも再発腫瘍において有意に増殖率が高いことが明らかになった。また、DFSP全体では、皮膚線維腫よりも増殖率が高かったが、悪性線維性組織球腫や線維肉腫より増殖率が低かった。さらに、DFSPの線維肉腫成分では増殖率が高かった。核DNA量が多いDFSPやp53蛋白の過剰発現を示すDFSPは他のものに比べ増殖率が高い傾向にあった。したがって、これらの示標がDFSPの予後因子になる可能性が示された。また、再発、転移をきたしたDFSPの症例2例について、再発・転移巣の腫瘍細胞の短期培養細胞を用いて染色体分析を行った。環状染色体は認められなかったが、由来不明のマーカー染色体の存在を確認した。さらに、fluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いて、このマーカー染色体が17番と22番染色体から成ることを確認し、DFSPに特異的な染色体転座t(17;22)を検出した。DFSPに特異的な染色体異常は再発や転移をきたした腫瘍でも保存されることがわかり、また、FISH法を用いた染色体転座の確認がDFSPの病理診断の補助となることが確認された。
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