隆起性皮膚線維肉腫(Demnatofibrosarcoma protuberans;DFSP)のうち、線維肉腫様組織像を呈する部分を含む腫瘍(DFSP with fibrosarcomatous areas;DFSP-FS)の6例を用いて、その通常のDFSP部分およびFS部分につき、ホルマリン固定バラフィン包埋切片からmicrodissectionを行い、そのそれぞれにつきDFSPに特異的なキメラ遺伝子COL1A1-PDGFBの存在をRT-PCR法にて検討した。その結果、通常のDFSPの部分は6例全例に、FS部分は5例にCOL1A1-PDGFBが検出された。また、FS部分でキメラ遺伝子が検出された5例では、通常のDFSP部分とFS部分のキメラ遺伝子の切断点が一致していた。次に、真皮や皮下組織など表在性に発生した成人型線維肉腫(superficial adult fibrosarcoma;SAF)の6例につき、パラフィン切片からRT-PCR法にてCOL1A1-PDGFBの存在を検討した。SAF6例中4例にCOL1A1-PDGFBが検出された。また、深在型成人線維肉腫5例、乳児型線維肉腫8例、他の紡錘形細胞肉腫28例にはキメラ遺伝子は検出できなかった。以上の結果は、DFSP-FSのFS部分は通常のDFSPと同じ遺伝子異常を有しており、FS部分でもその遺伝子異常が保存されていることを示している。また、通常のDFSPとDFSP-FS、さらに従来はDFSPとは別の腫瘍と考えられていたSAFはその組織発生を共有している可能性がある。そして、これらの腫瘍と深部発生の線維肉腫や乳児型線維肉腫とは遺伝子異常の観点からは腫瘍発生の機構が異なると考えられ、これら組織像が類似した腫瘍群の疾患概念のより深い理解と整理の一助となると考えられた。
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