研究概要 |
我々の発見したHPV4/60/65型とHPV63型、および従来より知られていたHPV1型関連封入体疣贅をモデルにHPV型特異的細胞変性効果のメカニズムについて検討した。前年度の研究において、HPV感染症の新疾患概念として提唱してきた黒色疣贅(pigmented warts)がHPV4/60/65型感染症であること、および、黒色調の原因にメラニン色素の増加が関与していることを明らかにしたが、本年度は、HMB45やMART-1などのメラノーマ関連抗体、抗チロシナーゼ抗体などを用いて行った免疫組織学的方法によりさらに検討を進めて、HPV4/60/65感染疣贅の病変部では特異的にメラノサイトの数の増加や細胞活性の増強が起こっていることを明らかにした(第17回国際色素細胞学会にて発表)。今後これらの点について、in situ hybridization 法等を用いた分子生物学的検討を加える予定である。また、異なる細胞質内封入体は電子顕微鏡的観察により、トノフィラメントあるいはトノフィブリルとの関連が予想されるものの、関連HPVの型により異なる所見を示しており、ケラチン代謝に対するHPVの間与と共に、その質がHPVの型の違いによって異なることを考えた(第89回日本病理学会総会にて発表予定)。今後、各種ケラチン抗体やHPV・E4抗体を用いた、免疫電顕的検討を加える予定である。これらの研究と並行して、HPV1関連封入体疣贅をモデルにしたHPVのライフサイクルの詳細を明らかにし、ライフサイクルもまたHPVの型により異なることを明らかにした(Virology,in press)。さらに、細胞質内封入体の臨床・病理学的検討を行なう中で、新しい封入体疣贅を発見・記載した(Dermatology,in press)。現在ウイルスDNAのクローニングを試みており、新HPVの発見に繋がると予想している。
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