【目的】DOL54遺伝子は、粘液型脂肪肉腫の原因遺伝子TLS-CHOPの標的遺伝子としてRDA法によりクローニングされた。DOL54遺伝子産物は、その構造から分泌型細胞外マトリックス蛋白と推定され、本遺伝子がトランスフォーム活性を持つこと、白色脂肪細胞の成熟過程に重要な役割を持つことが確認された。今回の検討ではDOL54遺伝子を用いた粘液型脂肪肉腫の診断法の確立を試みる。【結果】(1)抗DOL54抗体を用いた免疫沈降 DOL54遺伝子を高発現させた細胞を^<35->Sメチオニンで標識し、培養液中のDOL54蛋白を抗体を用いて検出する事を試みた。その結果、DOL54蛋白は細胞には検出されたが培養上清中には検出することができなかった。また、抗体を用いた免疫染色では細胞の膜から細胞質にかけてDOL54蛋白の局在が見られた。以上の結果から、DOL54は細胞周囲に限局するマトリックス蛋白であることが確認された。(2)RT-PCR法を用いたDOL54の検出 本遺伝子が粘液型脂肪肉腫に特異的に発現するかどうか確認するため、脂肪肉腫(LS)、悪性線維性組織球腫(MFH)など、未分化間葉形細胞由来の背景に粘液様物質を有する肉腫を対象に、DOL54の発現と組織学的所見との関連性を検索した。18例のLS、23例のMFH、3例の滑膜肉腫から採取された凍結標本からmRNAを抽出し、RT-PCRによりDOL54の発現を検索した。さらにDOL54陽性症例において、DOL54特異抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、粘液型LS及び円形細胞型LSの50%、MFHの33%にDOL54の発現が見られ、高分化型LS及び滑膜肉腫にはその発現は認められなかった。DOL54遺伝子の特異性は確認できなかったが、腫瘍細胞周囲に存在する粘液様間質とDOL54の発現に関連が示唆され、細胞分化におけるDOL54の発現が腫瘍発生に関与する可能性が示唆された。
|