研究概要 |
【研究目的】これまで間質性肺疾患の研究は主に肺胞の上皮細胞や繊維芽細胞についておこなわれてきた。しかし、血管系の異常に関する研究はほとんど行われていない。そこで、間質性肺炎における血管内皮細胞、特に毛細血管内皮細胞に注目し、疾患での異常および役割を明らかにすることを目的とした。 【結果】正常ヒト肺微小血管内皮細胞、肺動脈内皮細胞、動脈内皮細胞、皮膚微小血管内皮細胞を用いたin vitroの系で、thrombomodulin(TM)とvon Willebrand factor(vWf)の発現様式が血管内皮細胞間で異なることが分かった。TMは正常ヒト肺微小血管内皮細胞・肺動脈内皮細胞で優位に、vWfは正常ヒト動脈内皮細胞、皮膚微小血管内皮細胞で優位に発現していた。ヒト肺組織においても、肺動脈系の肺胞毛細血管内皮細胞はTM優位に、気管支動脈系の毛細血管はvWf優位であったことからTMとvWfの内皮細胞間での分布に生理的な意義があることが示唆された。さらに、共同研究者らによってヒトの腺癌ではTM優位であった肺胞毛細血管がvWf優位な表現型に変わることが明らかになった。間質性肺疾患でも同様な変化が考えられる。現在、正常ヒト血管内皮細胞を用い、TM,vWfの発現を抑制する因子を検索中である。これまでに、TNF-αがTMの発現を抑制すること、VEGFが動脈内皮細胞においてのみTMの発現を促進することが分かっている。 【研究計画】(平成12年度)今後、TM,vWfの発現分布が疾患とどのように関連しているかを明らかにしたい。そこで、まず間質性肺疾患での肺胞毛細血管のTM,vWf表現型を確認し、次にTM,vWfの発現を抑制する因子の検索を行う。
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