研究概要 |
粥腫牲と動脈硬化性病変の脆弱性と破綻のメカニズム解明と予防のために,本年度主に材料であるヒト動脈の採取と,その光学顕微鏡的評価および免疫組織化学的検討を行った。材料の採取に際しては動脈組織における生理的活性と病的活性化状態の区別を明確にするために,正常あるいは若年者(胎児を含む)の剖検例から採取された材料も病変と並行して採取に努めた。(1)動脈硬化巣内のエラスチンの分解に関してmatrixmetalloproteinasesの中では比較的新しい分子種であるMMP-12に着目し、既に発表された分子生物学的検討およびモノクローナル抗体(R&Dsystem s社)を用いた免疫組織化学的検討を症例数を増やして病変部との関与を検討した。粥腫性硬化巣のcore辺縁に存在するマクロファージの関与が強いという点では報告済みの論文(1998年、筑波大学渡辺ら)との一致をみたが,さらに踏み込んで実際病変部で基質を分解している様子をin situ zymography等の手法で明らかにする必要があると考えられた。(2)動脈硬化巣内におけるゼラチン(コラーゲン分解産物)分解活性の局在については、FIZ(film in situ zymography)を用いて検討した。分解活性の局在の確認に成功した後,ゼラチン分解活性蛋白の産生細胞の同定のために免疫二重染色を考案した。その際用いられた独特な方法を塚が発明者として特許申請(特許出願番号:特願平11-174826)した。MMPs抵抗性のコラーゲン特にミクロフィブリルコラーゲン(∨I 型コラーゲン)の解析を次年度の課題とした。
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