研究概要 |
子宮頸癌ではHuman papillomavirus (HPV)の16,18,31,33,35型など特定の型のDNAが高率に検出される。サザン法では、その存在様式はコンジロームや異形成ではフリーの状態であるのに対し、浸潤がんでは宿主DNAに組込まれている。本研究はホルマリン固定パラフィン包埋材料で高感度ISH法により、HPVの存在様式の違いを、フリーの状態はDP:diffuse pattern、宿主DNAに組込まれている状態をOP:oligo-dot patternに区別することができた。OPの所見は細胞のモノクローナルな増生を意味し、腫瘍性の病変を示唆する指標となるので子宮頸部病変をISH法を用いて検討しているが、今年度は、微小浸潤癌のCINとの共存関係およびHPVの陽性所見を検討した。癌研で摘出されたMIC49例の円錐切除および摘出子宮頸部を全割し癌部の最大浸潤幅(MIW)と最大上皮内進展幅(MSW)を計測し、その比(MIW/MSW)が0.4以上をA群(n=10)、0.1未満をB群(n=23)、および0.1〜0.4未満を中間群(n=16)とした。その結果、CINII以下の病変はA群、中間群、B群で3/10、16/16、23/23例に認めた。ISH法では5/10、9/16、11/23例でHPV陽性で、A群と中間群は全て16型、B群は8例が16型で3例がその他の型であった。浸潤部も陽性であったA群と中間群の各5例の浸潤部は全てOP。B群は2例がDP、1例がOP。上皮内進展部もOPはA群に多く(4/5)、DPはB群に多かった(10/11)。この結果から、浸潤傾向の強いA群はCINI期〜II期を経ないか、癌細胞が早い時期にCIN病変を置換するものでいわゆる大腸癌の"de nobo"型発生に比することができ、HPVは宿主DNAに組込まれて存在することを明らかにした。
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