研究概要 |
P21-activated kinase(PAK)はrhoファミリーに属するRac.Cdc42の標的蛋白として、MAPキナーゼの活性化や細胞骨格の修飾に関与している。我々はPAKに結合するヌクレオチド交換因子として近年報告されたPIXをクローニングした。PIXの活性化の機序やPIXが関与する情報伝達経路はほとんど解明されていなかったが、我々はPIXが、チロシンキナーゼ受容体であるEphB2受容体やPDGF受容体、または細胞外基質フィブロネクチンによる細胞刺激により活性化されることを明らかにした。PIXは、PAKとSHアダプターであるNckを介して、またはホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3-キナーゼ)のp85調節サブユニットとの結合を介して細胞膜にて上記受容体と複合体を形成し、PI3-キナーゼによってヌクレオチド交換因子としての活性が亢進されることをみいだした。その際、PI3-キナーゼの産生物であるPI-3,4,5-P3がPIXのPH領域に結合することが、PIXの活性化に重要であることが示唆された。またアフリカツメガエル初期胚の中胚葉細胞塊を用いた実験により、上記受容体ヘリガンド刺激を加えるとPI3-キナーゼによりPIXは活性化され、その結果、中胚葉細胞塊は細胞骨格の修飾を受け、フィブロネクチン基質上で周囲に移動、浸潤していくことが明らかとなった。これらのヌクレオチド交換因子活性の亢進や細胞移動、浸潤は癌の特性のひとつを説明する機序として理解できる。
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