研究概要 |
寄生蠕虫感染時に特徴的な宿主の免疫反応として好酸球増多・IgE産生・肥満細胞増殖があげられるが、これらは全てTh2細胞より作られるサイトカインによって支配されている。ところが、Th2細胞分化の機構については不明な点が多い。最近、ダニ由来のシステインプロテイナーゼがTh2細胞への分化に関与しているという報告がなされた(Comoy et al.J.Immuol.(1998)160,2456)。宿主の免疫系も寄生蠕虫より分泌されるプロテイナーゼによってTh2タイプにシフトすることが予想される。そこで我々は、寄生線虫である犬蛔虫Toxocara canis及び旋毛虫Trichinella spiralisの分泌排泄抗原(ES抗原)中に含まれるセリンプロテイナーゼのTh2細胞分化に及ぼす影響について検討を加えた。 犬蛔虫及び旋毛虫のES抗原中に含まれるazocaseinを基質としたプロテイナーゼ活性はPMSFにより60-70%阻害された。非処理ES抗原、及びPMSFまたは熱処理により不活化したES抗原で免疫したBALB/cマウスの脾細胞をES抗原とともに培養し上清中のIL-4,IL-5,IFN-γをELISAで測定した。各群の間で有為な差は認められなかったものの、非処理抗原で免疫した方が、PMSFまたは熱処理抗原免疫群よりIL-4/IFN-γの比が高い傾向が見られた。また、抗原特異的IgG1及びIgE産生も非処理抗原免疫群で高い傾向にあった。これらの結果より寄生線虫の分泌するセリンプロテアーゼにより宿主の免疫系がTh2タイプにシフトする可能性が示唆された。現在寄生虫由来セリンプロテアーゼがどのようなメカニズムでTh2細胞分化を誘導するか、RT-PCR法を用いて分子免疫学的に検討中である。
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