寄生蠕虫感染において宿主の防御機構として重要な役割を担っているIgEと好酸球の増加は主にII型ヘルパーT細胞(Th2)から産生されるサイトカインIL-4とIL-5に依るものであるが、何故寄生虫感染時にTh2優勢になるのかは明らかではない。非感作T細胞が抗原提示細胞により活性化され、分化・成熟するがその際の抗原提示細胞が非常に重要である。そこで寄生虫感染マウス抗原提示細胞でTh2への誘導がなされるかどうかをin vitroで検討した。その結果、寄生虫感染マウス抗原提示細胞はTh2サイトカインの一つであるIL-5産生を高く誘導し、IFN-g産生(Th1)を抑制した。IL-4の産生にはあまり影響を与えなかった。最近、抗原提示細胞内のグルタチオン(GSH)濃度の違いにより、Th1/Th2分化誘導に差があることが示された(GSH濃度が高いとTh1、低いとTh2を誘導する)。そこでGSHの前駆体であるN-アセチルL-システイン(NAC)で処理したマウス(投与により細胞内GSH濃度が上昇する)と対照マウスをそれぞれ寄生虫に感染させたマウスの抗原提示細胞を用いて同様の実験を行ったところ、部分的ではあるもののNAC処理抗原提示細胞でのIL-5産生が抑制された。(IFN-g産生は回復しなかった)また、NAC処理したマウスで好酸球増多が減少しており、前述のin vitroにおけるIL-5産生の抑制と一致する。このことから寄生虫感染時の抗原提示細胞が細胞内GSH濃度の低下によりTh2を優性にしやすくなっていることが考えられた。そこで抗原提示細胞である細胞株THP-1やJ774などを用いて寄生虫の体細胞抗原とともに培養したところ、GSH含有量の減少が認められた。このことから寄生蠕虫感染においてTh2優勢、特に好酸球増多になるのは抗原提示細胞のGSH減少がかかわる可能性が示唆された。
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