赤痢アメーバにおける病原性因子の解析を促進するために、リポソームによる形質転換を用いて、アンチセンスによる遺伝子発現抑制を行った。現時点でアンチセンスを用いた発現阻害作用は、システイン合成酵素遺伝子プロモーターとルシフェラーゼ遺伝子を用いてエピソームから発現させたレポーター遺伝子の発現をフォスフォロチオエート結合をもったアンチセンスオリゴで抑制した場合、30-40%であった。更に、オリゴヌクレオチドのウラシル塩基のC-5プロピニル修飾を施したものを用いると10%程度抑制効果が高まった。更に、メチル化などの修飾により抑制活性が高まると期待される。また、オリゴヌクレオチドの導入効果を向上されるために他種の陽性リボソームを用いたが、リポフェクタミン以上に導入効率の良いリポソームは見つからなかった。リポフェクタミンによるオリゴヌクレオチドの導入効率・局在の評価はFITCラベルしたオリゴヌクレオチドを用いて行った。その結果、8-12時間後に細胞質中に強いシグナルが見られた。顕著な核移行は見られなかった。従って、アンチセンスオリゴヌクレオチドは細胞質での蛋白合成を阻害しているものと想像された。本研究によりアンチセンス法による赤痢アメーバでの発現制御が一層の進展を見せ、病原性因子など多くの遺伝子産物の機能を解析する上で有用な手段を提供するものと思われる。
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