本研究では、原虫組換え体ワクチンの開発上必要不可欠となる原虫用遺伝子発現ベクターの改良を試み、細胞表在性あるいは分泌型の蛋白質として外来遺伝子が発現可能なプラスミドベクターを開発することを目的とする。持続感染による免疫が防御の主体となる原虫病では、細菌・ウイルスでの発現系を利用した組換え体ワクチンに満足のゆく効果が認められていない。このことから、対象となる原虫自体を運び手(Vehicle)として目的とする抗原を本来の感染プロセスを通じて、効率的に宿主に提示する技術(Delivery system)の開発が原虫病ワクチン開発の鍵とされている。本年度は外来蛋白質を分泌蛋白質として発現可能な系の構築する目的で、リーシュマニアの表在性Zn-プロテアーゼ(gp63)とのキメラ蛋白質として目的分子が発現されるように現有の遺伝子発現ベクター(p6.5)の改良を試みた。データベースに登録された塩基配列をもとにプライマーをデザインし、gp63N末端のSignal配列に対応する遺伝子断片を、原虫DNAからPCRで増幅した。増幅断片をp6.5の外来遺伝子挿入部位(expression site)の発現方向の上流に挿入し、新たにexpression siteを作製した。現在、改良されたベクターを用いて外来遺伝子の発現を試みている。
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