1.CFA/III遺伝子産物の生物学的機能解析 ヒト由来毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli:以下ETECと省略する)が産生する線毛性定着因子CFA/IIIの構築に関与する遺伝子群(以下cofオペロンと省略する)は、major pilin遺伝子(cofA)とprepilin peptidase遺伝子(cofP)を含め合計14個の遺伝子(オープンリーディングフレーム:以下orfと省略する)から構成している。cofオペロンのほぼ中央に位置するorf6は、コレラ菌の定着因子のひとつであるtoxin co-regulated pili(TCP)の構築にかかわるtcpC外膜リポタンパクをコードする)と相同性があり、その機能を解析するため、orf6欠失変異体を作製後、CofAの産生と線毛の形成およびCaco-2細胞(ヒト大腸癌由来細胞)への付着能を調べた。その結果、orf6欠失変異体はペリプラズム中に成熟CofAを産生したが、菌体表面上へのCFA/III線毛の形成が認められなかった。さらに、Caco-2細胞への付着能を欠していたことから、Orf6はCFA/IIIの構築に不可欠であることが考えられた。 2.生菌ワクチン候補株の作製 cofオペロンを非病原性大腸菌(大腸菌HB101)へのクローン化を行ったところ、菌体表面上にCFA/III線毛の産生が認められ、且つ、CFA/III産生性ETECと同様にCaco-2細胞への付着を示した。現在、このクローン株を用いて定着因子をターゲットとしたETEC生菌ワクチン開発およびワクチン抗原(コレラ毒素Bサブユニット)のキャリアーとしての応用を検討している。
|