全身性ループス紅斑などの膠原病は、Bリンパ球による自己抗体の異常産生に起因する。しかし、通常ならプログラム細胞死によって処理されるはずの自己反応性Bリンパ球が、どのようなメカニズムで生存し、抗体産生を続けるのか十分に解明されていない。我々はこれまでに、細菌内毒素(LPS)を投与することによって様々なマウス自己免疫疾患モデルを作製してきた。これは細菌感染が膠原病発病に関わっている可能性を示唆している。したがって、LPS刺激を受けたBリンパ球が、どのようなメカニズムで活性化、分化、もしくは細胞死に至るのかを解明することは、自己免疫疾患の発症機序解明と治療に役立つ。この目的で、我々はLPS刺激によってBリンパ球内で活性化されるシグナル伝達分子BMK1に注目した。BMK1は、その細胞内生理作用、および活性制御機構がほとんど明らかにされていないMAPキナーゼである。LSP刺激によるBリンパ球の活性化メカニズムを解明するために、Fas抵抗性の休止Bリンパ細胞株を用いた実験モデルを採用した。LSPは休止Bリンパ細胞株TH252の劇的な抗体産生を促す。この実験モデルを用いて以下の諸点が明らかとなった。 1.BMK1が活性化され、活性化BMK1は転写因子p53をリン酸化する。 2.構成的不活性型BMK1を発現したBリンパ球はアポトーシスを起こさず、形態変化をおこし、細胞分裂を停止する。 3.BMK1の活性化はBリンパ球の細胞表面にあるCD14依存性に起こる。 4.BMK1の活性化はBリンパ球の核内に存在する転写因子AP-1の活性化に重要である。 以上のことからBMK1は転写因子AP-1の活性を制御することによって、Bリンパ球がLPSによって活性化され、増殖する際に重要な働きをしていることが明らかとなった。
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